抗生剤(抗菌剤)の適正使用 (後編) | みうら小児科クリニック


私たちの研究結果はPediatrics International という英文雑誌(2020年9月号)に正式に掲載されています。その内容は,抗生剤を飲んだことがあると,川崎病になるリスクが10倍ほど高くなるというものでした。また,抗生剤を飲む回数が多ければ多いほど川崎病になるリスクが高くなることも解りました。


DIクイズ1:(A)クラリスによる発疹の既往のある患者への代替薬

川崎病を起こしやすい抗生剤も解りました。一番はクラリスロマイシン(クラリスなど)とセフェム系抗生剤(メイアクトやセフジトレンピボキシルなど)です。その他にオゼックス(トスフロキサシン)や,オラペネムなどの強力な抗生剤と関連していることも解りました。

抗生剤は細菌を殺すための薬ですが,カゼの原因のウイルスには効きません。子どもの感染症の大部分はウイルス感染なので,カゼ症状の一つである中耳炎や副鼻腔炎も含めて抗生剤は稀な例を除いて効きません。しかし,日本の子どもたちは北欧の子どもたちの10倍ほども抗生剤を飲んでいます。また,使われている抗生剤も海外では小児への投与が禁止されている強力な抗生剤(オゼックスやオラぺネムなど)が普通に使われています。抗生剤の使用を減らすことで川崎病が減ることが期待されます。不用意に抗生剤を使うのはやめたいですね。

する。 ○ アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン及びラベプラ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。

2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。

JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。

・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。
・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。
・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。
・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。
・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。
・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。
・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。

本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

クラリス(一般名:クラリスロマイシン)とはマクロライド系の抗生物質です。従来のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを改良してできたものであり、ニューマクロライドともいわれています。抗生物質の代表といえるのはβラクタム薬(ペニシリン系、セフェム系等)ですが、マクロライド系も肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌、インフルエンザ菌や百日咳菌など一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、非定型菌のマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなど多くの細菌に対して効力を発揮します。いろいろな細菌に有効なので、呼吸器系の領域を中心に多くの診療科で処方されています。多くは咽頭炎・肺炎・中耳炎などに対する処方です。消化器領域ではピロリ菌の除菌薬としても数多く処方されています。皮膚科領域においては、感染を伴う、表在性/深在性皮膚感染症、リンパ管/節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍などの疾患に対して選択されることがあります。

カンピロバクター クラリスロマイシン経口(CAM)3~5 日間 ..

クラリスに最も特徴的なのは、一般的な抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効であることです。マイコプラズマは肺炎を引き起こすことで有名ですが、皮膚に感染して皮膚に治りにくい傷を作る原因になることもあります。またクラミジアは性感染症の原因となり、外陰部に痛みや痒みを引き起こします。マイコバクテリウムは皮膚の下で膿を作り、ジクジクとした傷を引き起こす原因菌です。これらはどれも稀な病気で抗生物質が効きにくいのが特徴ですが、クラリスは比較的よく効きます。またクラリスが改良される前の薬であるエリスロマイシンには胃酸によって効力が落ちるという弱点がありましたが、クラリスは胃酸の影響をほとんど受けません。体内にしっかりと吸収されるため、1日2回の服用で十分な治療効果が得られます。その他の特徴として、クラリスはアレルギーを起こしにくいとされています。βラクタム系の抗生物質に対してアレルギーがある人でも使用可能です。ただし他の薬と相互作用を起こしやすいので、飲み合わせには注意が必要です。

一般的な感染症に対してはクラリスロマイシン1日400mg、非結核性抗酸菌症には1日800mg、どちらも2回に分けて経口で投与します。投与量は年齢、症状にあわせて増減します。またピロリ菌の除菌に用いる場合は他の抗生物質や胃薬と併用して処方されます。

セフジトレンピボキシル(CDTR-PI) 、セフカペンピボキシル(CFPN-PI)経口.

細菌が感染症をひきおこすと体の防御反応として「炎症」がおきます。すると、発赤熱感疼痛腫脹機能障害といった炎症の徴候があらわれます。医師は「炎症の徴候」をみて、細菌感染症を疑い、診断します。

のどの細菌感染症である「溶連菌感染症(溶連菌性咽頭炎)」は、のどの「発赤」、飲み込むときの「疼痛」などで診断されますし、「急性中耳炎」は「発熱(熱感)」と鼓膜と周辺の「発赤」、耳の「疼痛」などを診て診断されます。


抗菌薬:エリスロマイシン,クラリスロマイシン,ダプソン,トロレアンドマイシン,他 ..

ある医師の臨床経験では、妊娠中期の重症肺炎患者にエリスロマイシンを投与したケースがあり、慎重なモニタリングの下で治療を行い、母体の感染症を無事に治癒させることができましたが、胎児の安全性に関する不安は最後まで付きまとい、患者さんと共に慎重に経過を見守りました。

[PDF] 【4】Q&A 腎機能に応じた抗菌薬の投与量について

エリスロマイシンの長期使用や高用量投与において、稀ではありますが可逆性の聴力低下や耳鳴りなどの聴覚異常が報告されており、これらの症状は特に腎機能に問題がある患者さんや高齢者において発生リスクが高まるため、慎重な投与と定期的な聴力チェックが欠かせません。

クラリス錠 200mg クラリスロマイシン 1 日 400mg

その代表格であるクラリスロマイシンとアジスロマイシンは、従来のエリスロマイシンと同じマクロライド系に属しながら、分子構造の最適化によって抗菌範囲を拡大し、体内での薬物動態を改善しました。

アモキシシリン/クラブラン酸合剤やセフジトレンピボキシルなどのβ-ラクタム系薬は、細菌の細胞壁形成を阻害することで殺菌効果を生み出します。

消化器系の副作用は多くの場合一過性ですが、重度の症状や持続的な不快感がある際には担当医に相談し、投薬量の見直しや別の薬剤への切り替えを検討することが賢明です。

[PDF] 死亡症例の概要(年齢順)(販売開始から平成19年9月30日まで)

多くの患者さんは症状が和らぐと服薬を中断したくなる気持ちに駆られますが、これは治療効果を損なう危険な行為であり、医師からの指示を厳守することが極めて重要です。

○ マクロライド系の抗菌薬(クラリス=クラリシッド=クラリスロマイシン、ジスロ ..

エリスロマイシンによる治療期間は、感染症の種類や重症度に応じて設定されますが、一般的に7日から14日間の投与を行うことが多く、この期間設定は長年の臨床経験と研究結果に基づいています。

マイシン、ジスロマック、アジスロマイシン、ジョサマイシン、ジョサマイ、アセチルスピラマイシンなど ..

膿痂疹、蜂窩織炎
多くは黄色ブドウ球菌が原因。黄色ブドウ球菌はペニシリン系耐性が多いため、セファレキシン(第1世代セフェム系抗菌剤)が第一選択薬。外用薬(塗り薬)のうち、ゲンタマイシンは耐性(効かない)と言われている

注)マクロライド耐性肺炎球菌(クラリスロマイシン:MIC≧1μg/mL)

胃腸炎
:カンピロバクター、サルモネラ菌などが原因。前者はクラリスロマイシン、後者はホスホマイシンが効くが、「抗菌剤適正使用」の点から「軽症には抗菌剤不要」とされている。

安全性評価対象例115例中36例(31.3%)に副作用が認められ

特に非定型肺炎の主要な原因菌であるマイコプラズマやクラミジアに対して強力な抗菌作用を持つため、これらの病原体による感染症患者の治療において高い有効性を発揮します。

マイコプラズマ肺炎 クラリスロマイシン 15mg/kg/日, 分2 (10日間) ..

これらの薬剤は耐性菌に対しても効力を維持していることが多く、市中肺炎などの呼吸器感染症治療において中心的な役割を担っています。

クラリスロマイシン錠200mg「サワイ」,MSD,6241013F3051,レボフロキサシン ..

・ピボキシル基を有する抗菌剤(セフカペンピボキシル(フロモックス)セフジトレンピボキシル(メイアクト)、セフテラムピボキシル(トミロン)、テビペネムピボキシルなど)
:低カルニチン血症(小児で低血糖、痙攣、脳症を起こす)の副作用あり。テビペネムピボキシル(オラペネム)は7日間までの処方制限あり

クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス) – 呼吸器治療薬

口腔カンジダ症はカンジダが白いコケ状に付着し疼痛、違和感などが認められる真菌感染症です。症状が軽度の際は口腔清掃、含嗽などで軽快します。特に義歯を使用している方は義歯を清掃してください。軽度では重曹によるうがいも効果的です(ぬるま湯100ml程度に重曹茶さじ1杯程度)。

セフジトレンピボキシルは、呼吸器感染を引き起こす菌に対して特に強い ..

ニューキノロン系はアルミニウムやマグネシウムを含んだ制酸剤などや鉄剤と同時に服用すると、吸収が低下することがあります。またセフェム系のセフジニルは、鉄剤と同時服用で吸収が約10分の1まで低下します。服用時間をずらして服用することで対処します。クラリスロマイシンでは一部の薬剤とは使用できないものがあるので必ず併用薬は確認することが大事です。

[PDF] 【金属含有薬剤と相互作用を起こすおそれのある薬剤】

喘息の患者さんは消炎鎮痛剤に注意する必要があります。特に、以下に示すような症状の方は、消炎鎮痛剤で喘息発作が認められる(アスピリン喘息)の疑いもあります。歯科主治医、薬局で必ず伝えてください。

セフジトレン ピボキシル ジメモルファンリン酸塩 L−カルボシステイン ..

歯科では、消炎鎮痛剤を処方されることが多いです。消炎鎮痛剤で多く認められる副作用は食道、胃腸障害、腎障害です。副作用は、用量(薬剤を服用する量)及び投与期間が多くなると副作用が認められる頻度が高くなります。すでに、腰痛などで消炎鎮痛剤を服用している方は、必ず主治医に伝えてください。同じような消炎鎮痛剤が重複することで副作用が出現する率は高くなります。痛みが激しいために、短時間で消炎鎮痛剤を何回も服用すると用量が増えてしまうために、副作用の出現率は高くなります。食道、胃腸障害を少なくするためには、決められた用量で、食後に多めの水で服用することが大事です。腎障害の患者さんは、消炎鎮痛剤により腎障害を悪化させることがありますので主治医に伝えるとともに、服薬後に浮腫(むくみ)などの症状が認められた際は服薬を中止して下さい。

セフトリアキソンナトリウム水和物 クラリスロマイシン メシル酸ガレノキサシン水和物.

一般的な感染症であれば、服用開始から2~5日程度で症状が改善してきます。
ただし、症状が良くなったからといってすぐに服用を中止してはいけません。症状をしっかり改善し、かつ耐性菌の発現を防ぐためには一定期間服用を続けなければいけません。
したがって、重篤な副作用などがない限り、処方されたクラリスロマイシンは飲み切るようにしてください。