特に注意が必要なのは、以前ハチに刺されたことがあり、ハチ毒に対するIgE抗体ができている人です1)。


スズメバチに多数刺されたりしない限り、初めて刺されて全身症状がでる可能性はありません。アレルギー反応は複数回刺されることにより感作が成立し、その後の刺傷時に発生します。
原理的には2回目以降となりますが、実際上は2~3回目の刺傷で発症することはそれほどありませんので、刺された回数が少なく、過去に全身症状の既往のない方は次項の対処で様子を見て下さい。
小さなお子さんはほとんどこの場合に該当します。
私の長い臨床経験の中で、小児で蜂に刺されて全身症状を呈した例は片手で数えられる数しかありません。

通常の蜂刺されでは、刺傷部の限局した発赤と痛みは時間とともに改善しますが、半日位してからだんだん赤く腫れが広がってくることがあります。この「大きな局所反応」自体は48時間くらいを過ぎると改善するので心配はありませんが、時としてその後の刺傷時の全身症状につながる可能性が指摘されています。
このような、刺されて1~2日後になって大きく腫れるような反応が見られた方は抗体検査を受け、結果により必要な指導を受けた方がよいでしょう。

刺傷歴のある方で、刺されて30分以内に刺傷部の局所反応以外に、全身のかゆみや蕁麻疹、息苦しさ、めまいやふらつきなど何らかの全身症状を起こしたことのある方は、抗体検査を受け、エピペンの携帯や刺傷時の対処について十分な指導を受けて下さい。


一度に多くのハチに刺されたときにはアレルギーによるものでなく、ハチ毒による急性症状で死亡することもある。 キイロスズメバチ

ハチに刺されても、すべての人がハチ毒アレルギーになるわけではないと先に述べましたが、特異的IgE抗体は、つくられるまでに早くて1~2週間、だいたい3~4週間程度かかるので、特異的IgE抗体を調べる検査を受けるには1回目の刺傷から1カ月後以降に来院するように勧めています。検査項目としてスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3種類があり、いずれも保険適用になっており、検査結果は1週間程度でわかります。

ハチ毒によるアナフィラキシーの発症機序には、大きく2つあります。一つは、特異的IgE抗体を介した「即時型アレルギー反応(Ⅰ型アレルギー)」です。もう一つが、特異的IgE抗体を介さない、「アナフィラキシー様反応」です。これはハチ毒の成分の中にはヒスタミンなどが含まれており、複数のハチに攻撃されて、何カ所も刺されてしまうと、多量のハチ毒注入によるアナフィラキシー様の反応を起こす危険性があります。この場合は、抗体とは関係なく起こるので、初めてハチに刺されたとしても、多数のハチに刺されるとアナフィラキシー様反応によるショック死に至ることもあります。

蜂刺されが起きやすい夏季に多いハチ毒アレルギーの症状、アナフィラキシーの危険性、調べる方法、抗体検査の費用、エピペン処方を解説します。

従来、本月報の特集記事の主題は、感染症サーベイランス事業の対象疾病を主としてきたが、平成9年4月の研究所の名称変更・一部組織再編を機に、今後は当研究所が関わっている他の重要な疾病をも扱うこととした。今月の特集は、感染症ではないが、昆虫医科学部が関係している蜂刺症(はちししょう)を取り上げた。1.蜂刺症の現状わが国では、蜂刺症の対象となる蜂類としては、スズメバチ類16種、アシナガバチ類11種、ミツバチ類2種、マルハナバチ類14種が知られている。このようにわが国に生息するハチ類は米国や欧州諸国の種類数と比べてはるかに多く、このことがハチ毒の種類を多くし、ハチ毒アレルギーの問題を複雑にしている。現在までに厚生省に届けられた蜂刺症による死亡者の統計によると、年変動があるものの毎年30~40名が蜂刺症の犠牲になっている。1984年には73名を数え、今までの統計上最多数となっている()。また、1994年も44名で、毒蛇咬傷による死亡数(過去3年の平均で10.7人)よりはるかに多い。月別蜂刺症発生状況をまとめた長野県佐久総合病院の報告によると、受診患者のピークは8月に見られ、全体の約9割が7~9月に集中している。この時期はスズメバチ、アシナガバチ類では巣のサイズが最大規模に達しており、働きバチの巣を守る防衛行動も高まっている。各都道府県からの報告を厚生省がまとめた衛生害虫発生状況の統計では、ハチ類の相談および駆除依頼件数は、シラミ類、ダニ類、ネズミ類などに関する件数を超えて、過去3年間トップを占めており、10年前と比べ約9倍に増加している()。このような急激なハチ類発生数の増加傾向は、都市部近郊において人の居住地域がスズメバチやアシナガバチ類の生息域に隣接または入り込んだこと、以前と比べアウトドア・スポーツ人口の増加等による人の野外活動が盛んになったこと、小型、中型スズメバチ類の重要な天敵であるオオスズメバチの数が都市部近郊で最近減少している等の諸要因が関わっていると考えられる。2.蜂刺症はどのような場面で起こっているか蜂刺症による死亡症例の統計は全国的に把握されている。今までに報告されている死亡症例では、庭木の剪定作業中に数匹のセグロアシナガバチに刺されてショック症状を呈し死亡した例、キノコ狩りに出かけ大型スズメバチに数10カ所刺されて意識消失しそのまま死亡した例、林業関係者が収穫調査中に突然スズメバチの攻撃を受けて意識を消失し、医療機関に搬送された時点で心停止状態に陥りそのまま死亡した例などである。大部分の症例は致死量を超えた毒液の注入による死亡ではなく、IgE 抗体が関係したI型アレルギーが原因と考えられる。これらの例の場合、健康な人に突然訪れる死であり、また多くの症例では数10分から数時間で致死することから悲惨である。なお、死亡症例の大部分は40歳以上の中高年層に多いのが特徴的で、男性死亡者数は女性の3倍である()。重症例では、山間部での地質調査の仕事中に突然キイロスズメバチに14カ所刺され約20分間意識を失った例、トラックの運転士が自宅から出勤時にホソアシナガバチに腕を1カ所刺され、約10分後運転中に意識が朦朧となって路線バスと正面衝突をした例、クロスズメバチに背中を3カ所刺されて全身の蕁麻疹、呼吸困難を起こして救急外来で治療した例、自動車運転中に窓から飛び込んだアシナガバチに首筋を刺され頸部全体に浮腫が起こり呼吸困難に陥った例などさまざまな症例がある。これらの症例を分析すると蜂刺症は我々の生活の中で普通に起こりうることを示しており、また、農林業従事者がハイリスクを負っている事が理解できる。3.ハチ毒アレルギー、治療およびその対策ハチ類の毒成分は大別すると酵素類、ペプチド類、低分子物質の3つが知られている()。これらの成分は結合組織破壊、血圧降下、細胞膜透過性亢進、痛み、平滑筋収縮などを起こすことが知られており、蜂刺されによる毒液注入によってこれらの物質が総合的に働いて激しい諸症状が出現する。I型アレルギー患者は過去に同じ種または近縁の種のハチに刺された経験を持つ場合が多い。毒液中の酵素類はハチ類で部分的に共通したアミノ酸配列を持つことから、ある種の毒成分に対してIgE 抗体を持つ人は複数種のハチ毒に対するアナフィラキシーの惹起にも十分注意する必要がある。蜂刺症の治療には抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を刺傷部に塗布し、冷湿布をする。全身症状の強い場合は抗ヒスタミン剤やステロイド剤を内服する。ショック症状が認められた場合は,エピネフリンを0.3~ 1.0mg皮下注射し、気道確保、血管確保、気管支拡張剤とステロイド剤の投与および不整脈対策を行う。なお、一部の医療機関でハチ毒アレルギーの既往歴のある人に減感作療法が行われているが、減感作用に輸入されたアレルゲンはまだ認可されておらず、治験的に行われている。米国ではハチ毒アレルギーの人が全人口の1~3%ほどいると推定されている。近年、わが国の都市部でのスズメバチ類の増加傾向等を考えると適切なハチ毒アレルギーの診断および治療対策を立てる必要がある。なお、予防対策としては、野外活動中にスズメバチ類の巣と突発的に遭遇し、見張りのハチに威嚇や攻撃を受けた場合、大声で騒いだり、腕でハチ類を追い払う事は厳禁である。姿勢を低くして巣から速やかに離れる事が重要である。

ハチ毒アレルギー症状が出現した人は、その後に再びハチに刺されると、アレルギー反応がより強く出る可能性があります。1回刺されて抗体ができると、その後は刺されなくても体内で抗体がしばらくつくられ続けます。そのため、1回刺されてから1、2年以内に再び刺されると、アナフィラキシーの起こるリスクが非常に高いとされています。反対に、抗体ができてから5年、10年経過すると、抗体価が徐々に下がってアレルギー症状が出づらくなっていくこともわかっています。なお、子どもについては、理由はよくわかっていませんが、重症化しづらく、2回目に刺されてもアナフィラキシーが起こる可能性は低いとされています。

特に8月から10月はスズメバチの被害が多くなる季節です。毎年、何人かがスズメバチ ..

山や海へ出かけることの多い夏には、有害な生物に接する機会も多くなります。特に8月から10月はスズメバチの被害が多くなる季節です。毎年、何人かがスズメバチに刺されて亡くなっていますので、十分な注意が必要です。

ハチに刺されると、体内にハチ毒に対する抗体ができ、次に同じ種類のハチに刺されたときには、人によっては、アレルギー反応を起こし、アナフィラキシーと呼ばれるショック症状を起こします。アナフィラキシーを起こすと、呼吸困難や血圧低下などを起こし、最悪の場合、死に至る危険もあります。特に、アレルギー体質の人や、ハチに一度、刺されたことのある人は、十分注意する必要があります。重症化が予測される人や山奥での作業などですぐに治療することが困難である人に対しては、アドレナリン自己注射薬(エピペン🄬)が処方されることもあります。

ハチに刺されたときの症状は、ハチの毒そのものによるものと、ハチの毒に対するアレルギー ..

ハチ毒の成分についても触れておきましょう。ハチ毒の成分は、ハチの種類によって異なります。スズメバチとアシナガバチは、主にホスホリパーゼA1、アンチゲン5といったアレルゲンを含み、スズメバチとアシナガバチの共通抗原としています。そのため、アシナガバチに刺されてアナフィラキシーを起こすと、次にスズメバチで刺されたときに、同様の症状が現れることがあります。逆のパターンももちろんあるので、注意しなければなりません。アシナガバチはスズメバチ科の一種なので、種として近縁であることが、毒液の成分で一致する部分がある理由とみています。私たちの研究グループは、スズメバチ毒またはアシナガバチ毒アレルギー患者の9割以上で、アンチゲン5に対する特異的IgE抗体が陽性であったことから、極めて重要なアレルゲンであることを見出しました。

10~30回以上の刺傷歴が珍しくない営林署職員ではスズメバチ、アシナガバチのアレルギー抗体陽性者も多く、以前は毎年1~2名の職員が従事中の蜂さされのアナフィラクシーで亡くなっていました。
実は私が佐久総合病院アレルギー科在職中に皮膚科と共同で長野営林局管内の蜂アレルギーの実態調査を行い、その調査結果を元にエピペンの前身にあたるアナキット(エピネフリンと注射器のセット)の国内緊急輸入が初めて承認され、全国の営林署の現場に設置された経緯があります。
その後操作の簡便なエピペンが導入され、林業従事者については平成20年から「林業・木材製造業労働災害防止規程」で抗体検査結果陽性者のエピペンの携帯が努力義務とされ、その後の死亡事故の減少につながっています。
今回の特集では、最近相談される機会が増えている蜂アレルギーとその対応について、専門医の立場から要点をまとめてみました。


[PDF] 森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために

さて、ハチ毒アレルギーにならないようにするには、とにかく、ハチに刺されないようにすることです。しかし、屋外作業や野山でのレクリエーション、さらには、都市部でもスズメバチの被害があることから、ハチに刺されるリスクは低くはありません。ハチの習性を知り、ハチを刺激しないように行動しましょう。

刺すハチとしてはアシナガバチ(資料19)、スズメバチ(資料20)が代表的です。 ..

また、刺傷時におけるハチの種類は、前任地での調査でアシナガバチが71%、スズメバチが18%、ミツバチが8%という結果になりました。スズメバチ刺傷による死亡が大々的に報道され、ハチ毒アレルギーというとスズメバチにばかり注目が集まりますが、どのハチに刺されても、アレルギーを起こす可能性はありますし、重篤化してアナフィラキシーを発症し、命が危険にさらされることもあります。

アシナガバチは、スズメバチと比較すると攻撃性が低い種類ですが、巣を ..

暖かい季節になると、色々な虫に刺されるトラブルが増えてきますが、最も注意したいのが「ハチ」の被害です。日本でよくみかけるのは、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチですが、

スズメバチのような外被はつくらない。 巣の材料は、スズメバチと同様に樹皮 ..

ハチに刺されると、痛み、みや発赤といった皮膚症状が現れますが、これら局所症状だけであれば、数日で改善します。しかし、感作された人がハチに再び刺されると約17~20%がハチ毒アレルギーを発症し、全身のじんましん、、浮腫、呼吸困難などを起こすアナフィラキシーに陥るとされ、そのうち数%は意識障害、急激な血圧低下といったショック状態が起こって死に至る場合があります。特にハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーは、発症するまでの時間が10~15分と短く、さらにアナフィラキシー発症から心停止までの時間は、わずか15分という研究報告もあるため、救急車が間に合わないなど、命を落とすことにつながっていると考えられます。

なお、過去にハチに刺されてじん麻疹などのアレルギー反応がでたことのある方

ハチ毒アレルギーと判定された患者に対して、ハチ刺傷に対する対策や予防法として、「生活指導」「アドレナリン自己注射薬(図3)の携帯の指導」を行っています。「生活指導」では、ハチ毒アレルギーのある人はハチと生活環境を共にしないことに限ります。そうはいっても、ハチに遭遇する可能性は、どこにでもあります。巣に近づかない、ハチを刺激しない、黒い服を避けるなどの一般的なハチ刺傷回避の方法を実行しましょう。

アシナガバチ類は、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、キボシアシナガバチ

どのハチに刺されても、ハチの毒液によって鋭い痛みが出て、15分以内には刺されたところが赤く腫れあがり、熱を持ってかゆくなります。刺された直後は元気そうでも、ので、しばらくは安静にして様子を見ましょう。もし刺されたところ以外に症状が出なければ慌てる必要はありませんので、次の応急処置をしてください。

スズメバチなど攻撃性の強いハチや,巣が大きい,高所にあるなど作業が困難 ..

昆虫アレルギーの中で、蜂刺傷や蟻咬症は全身アナフィラキシー(即時型反応)を起こし致死 的な経過をたどることがあります。
本邦では蜂刺傷による死亡数は年間 20 名前後と報告され、その多くはショック死が原因であります。林業・木材製造業従事者の約 40%、電気工事従事者の約 30%はハチに対する特異的IgE抗体が陽性であったとする報告もあります。
蜂刺傷を経験することの多い林野事業に関連する職種は、ハチアレルギー体質者が多く存在し、蜂刺傷により全身アナフィラキシー症状を起こす危険性が極めて高いことが明らかにされました。

令和2年度から、鎌倉市スズメバチの巣駆除費補助金交付制度を開始しました。 ..

アドレナリン自己注射薬は、ハチに刺されてアナフィラキシーを起こした経験のある人は必携で、アナフィラキシーを経験していないハチ毒に感作されている人にも、携帯を勧めています。野山での仕事など、ハチに遭遇する可能性の高い環境では、ぜひとも携帯してほしいと考えています。国や自治体の森林組合などは、毎年血液検査を行ってハチ毒アレルギーの抗体の有無を調べ、陽性の人には作業中の携帯を義務付けています。

スズメバチ以外のハチ(アシナガバチ、ミツバチなど)は、活動中 ..

人を刺すハチの毒液には、アレルギーを招くさまざまなアレルゲン(抗原)が含まれています。私たちの身体は1回ハチに刺されると、ハチ毒の成分に反応して身体を守ろうとする免疫機能によって、「特異的IgE抗体」がつくられ、「感作」された状態になります。初めて刺された人のうち、感作される人は1~2割程度にみられます。

ハチアレルギー | みんなのアレルギー情報室 | Allergy Insider

昆虫アレルギーの中で、蜂刺傷や蟻咬症は全身アナフィラキシー(即時型反応)を起こし致死 的な経過をたどることがあります。
本邦では蜂刺傷による死亡数は年間 20 名前後と報告され、その多くはショック死が原因であります。林業・木材製造業従事者の約 40%、電気工事従事者の約 30%はハチに対する特異的IgE抗体が陽性であったとする報告もあります。
蜂刺傷を経験することの多い林野事業に関連する職種は、ハチアレルギー体質者が多く存在し、蜂刺傷により全身アナフィラキシー症状を起こす危険性が極めて高いことが明らかにされました。

特に過去にハチに刺されてる場合、ハチ毒でアレルギーのショック症状を起こす危険があります。 ハチの種類. アシナガバチ. アシナガバチの巣.

レクリエーションで野山に行く機会のある一般の方には、アドレナリン自己注射薬について説明し、本人が希望する場合は処方しています。ハチ毒アレルギーでなくても、刺されることでアナフィラキシーの症状の出るリスクが高い人は処方できるようになっており、保険も適用されます。

※私有地(個人や会社敷地内等)については、原則、本市ではスズメバチ等の駆除を行なっておりません。 ..

臨床的に最も重要な蜂の種類はスズメバチ類、アシナガバチ類、ミツバチ類の 3 つです。蜂刺傷による全身症状の発症機序として、
(i)蜂毒に対するIgEを介したアナフィラキシーと、(ii)IgE を介さず多量の蜂毒注入などによる直接作用によるアナフィラキシー様反応があります。
蜂毒には多数のアレルゲン(アレルギーの原因となるタンパク質)が含まれており、中にはハチの種類を超えて共通のアレルゲンもあります。そのため、アシナガバチに刺されてアレルギーを獲得した患者が、スズメバチに刺されてアレルギー症状を発症することもあります。

※ショック症状が現れる時間が短いほど危険性が高い。 アナフィラキシーショック

ハチに刺されると、ハチの毒に対する抗体ができます。30分以内にショック状態に陥り、意識消失、血圧低下、呼吸困難によって死に至る危険性があります。